旧暦ホテル ―古くて新しい暦と暮らす―

2018年立春からスタート。旧暦と共に、「大人の本気の『ごっこ遊び』を通じ、ホテルで過ごすような快適な日々を追い求めていきます。

霜月のまとめ旅行記(霜月の旧暦ホテルまとめ)

1ヶ月前に彼女にフラれた。

2年付き合って、さすがに最初の頃のように頻繁には会ってなかったけど

それでも俺は今後も「普通」に付き合っていけると思ってた。

 

「今年のクリスマスは何食べに行きたい?

好きに決めてくれていいよ。何なら予約もお願い。

俺、仕事忙しいしさー」

そう切り出した瞬間

「あ、無理」

「え?あ、イブとか当日とか無理?じゃあ」

「いや、もう無理だわ。

私ももう28歳だし、仕切り直しさせて」

「え?仕切り直しって?」

「うん、別れたいの」

 

世界が変わった。

 

女子が冷める時は、引き算じゃなく割り算だって

この間先輩が言ってたな。

「10点マイナス!」っていう口ぶりで、実は10で割ってるって。

自分に対する点数、90点がいきなり9点になるって。

俺、何か割られる事したのかな・・・

いや、急にそんな事言い出すなんて、あいつもあいつだよな。

 

そんな事を考えつつ、雪の降る中一人で旅行に行く事にした。

 

バイクで着いたホテルは「旧暦ホテル」。

ロビーに入るとフロント前にひっそりと

ミニクリスマスツリーが飾られていた。

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普通はドーンと飾るもんじゃないのか?

 

フロントの着物の女性に聞いてみると

「こちらのホテルは日本の旧暦をテーマにしていまして。

クリスマスは旧暦ではないので・・・。

でもこの時期何もしないのも寂しいので

こうしてひっそりと楽しませて頂いております」

 

うふふ、と微笑みながら言う彼女。

どうせ結婚してるんだろうな。

家には旦那と子どもがいるんだろう。

くっそー、俺だけこんな時期に一人かよ。

 

お部屋はこちらです、と彼女に案内され部屋に入る。

うわっ、広い。ホテルなのにいわゆる「玄関」がある。

冬至のこの時期、こちらのお花を飾っています」

指し示された方向を見ると、生花が飾られている。

 

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水仙とピンポンマムです。共通点、お分かりになりますか?」

見た目を裏切らず、花には疎いのでと返すと

「実はどちらも『ん』の文字が名前に入ってるんです。

冬至の時期には『ん』のつく食べ物を食べると良いのですが

お花にもその方法を取り入れて、スタッフが活けたんですよ」

 

へ〜。そんな文化があるんだなぁ。彼女にも教えてあげ・・・

いやいや、もうそれは出来ない。

我ながら引きずってるなぁ。

 

着物の女性は部屋の説明を一通り終えて帰っていったので

一人でゆっくり風呂に入る事に。

 

まだ明るい内から外の景色を見ながら入る風呂。

しかも雪がチラチラ舞っている。

最高だ。

あいつも一緒に来れたら、どんなに楽しかっただろう。

南の出身だから、雪を見て喜んだだろうなぁ。

風呂からの景色を写真に撮りたいと言ったかもしれない。

 

ずっと恋人同士、仲良くやっていけると思ってたのになぁ。

 

ちょっと泣けてきた。

誤魔化すように顔を拭って湯船から出る。

 

風呂から上がって、戸棚の中に収納されてたテレビを

一人がけの、足を伸ばせる大きな椅子に座って見てると

頭がちょっとぼんやりしてきた。

少し寒気もする。熱でもあるのだろうか。

 

フロントに電話をして状況を説明すると、ポカリ2本と体温計を持って来てくれた。

はかってみると7度5分。

そう大した熱ではないので、このまま部屋で休むことにした。

 

「おじややうどん等の夕食になさいますか?」と聞かれたので

「症状は大したことはないので、普通のごはんが食べたいです」

そう答えると

「それなら夕食は軽めの内容にして、お部屋にお持ちいたしますね」と言ってくれた。

正直助かる。

 

しばらくベッドで寝ていると、夕食の時間になったらしい。

部屋のインターホンが鳴り、ワゴンで夕食を運んできてくれた。

部屋のテーブルに着々とセットしてくれる。

 

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そして

 

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デザートも!これは嬉しい。

クリスマス風の和菓子だ。こんな物もあるんだなぁ。

 

「召し上がるのが辛ければ、無理はなさらず残して下さいね。

冬至にちなんで、『ん』のつく『なんきん』と『人参』を使っています。

汁物も具沢山にしていますので、どうぞゆっくり召し上がって

温まって下さいね」

 

着物の女性ともう一人のスタッフさんが、優しく語りかけてくれるので

またちょっと泣けてきた。

 

夕食を終え、フロントに連絡し、食器を下げてもらった。

「ありがとうございます。美味しかったです」

結局完食した。

 

歯を磨いてベッドに横になると、すぐに眠ったようで

気付けば翌朝になっていた。

 

ものすごく汗をかいたらしい。

昨日頂いたポカリの残りを冷蔵庫で冷やしておいたので

半分ほどを一気に飲んで熱をはかる。

・・・よし、平熱だ。

 

シャワーを浴びてさっぱりしてから朝食を食べに出ようとしたら

フロントから電話があり、朝食も部屋に持って来てくれるとの事。

助かりますと返答し、さっとシャワーを浴びた。

 

朝食として持ってきてくれたのは、パンプディングだった。

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柿がゴロゴロ入っていて美味しかった。

 

朝食後、体温計を返しお礼を言うためにフロントへ行くと

フロント前のコンシェルジュデスクでは

女性スタッフと若い男性が親しげに話していた。

 

「兄夫婦の結婚式も無事に終わり・・・」

「わあ!おめでとうございます!」

聞くとはなしに聞こえてくる話によると

彼のお兄さんはこのホテルが偶然ご縁を結んで結婚したらしい。

 

「結婚式でも馴れ初め映像で、旧暦ホテルが出たんですよ!」

ふーん。お幸せな事で。

俺の気持ちなんか関係ないもんな、と思ったところで気付いた。

 

そういや彼女と付き合ってた時、結婚の話が出なかったのだ。

 

同い年の彼女とは、いつまでも恋人として仲良く

色んな所に行ってて、クリスマスとか誕生日とかも記念日とかも

結構自分ではマメにやってるつもりで、彼女も喜んでくれてて。

 

このままずーっと仲良く過ごせたらと思ってたけど

俺は「その先」の事を考えてなかった。

もしかすると彼女は「その先」を考えてたのかもしれない。

 

誰々ちゃんが結婚した、子どもが生まれた

今月結婚式2回も出席するからご祝儀が大変

彼女からのそんな内容の話が増えたなとは思ってたけど

俺はその時「ふーん」で流してた気がする。

 

女子側からこういうのを言うのって、なかなか難しいよな。

そりゃあいずれは結婚したい。でも「いずれ」だ。もっと先だ。

俺はまだまだ彼女と「恋人」として過ごしたい気持ちも強かったし

結婚なんて考えられなかった、というのが正直な気持ちだ。

だってまだ28だ。まだまだ遊びたい。

 

でも、女の人にとっちゃ「28」って正念場なのかもしれない。

そんな正念場中に、隣にふわふわした男がいたら

仕切り直したくもなるのかもしれない。

 

とりあえずフロントに体温計を返して部屋に戻る。

チェックアウトまでベッドでのんびり過ごそう。

そしてこれから来るかもしれない出会いに備えて

自分の将来を考えようと思った。

 

 

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霜月の妄想旅行記でした(笑)

男の傷心旅行です。

 

お花:ラビットさん

コンシェルジュ:紺さん

ツリー、夕食、朝食:じゅん

 

でした。

 

ちなみに「女子の減点法は割り算」は、うちの夫が言ってました。

夫よ、かつて何があったのだ(笑)

そういう感覚はあまり無いのですが、私が考え方がおっさんやからかな。

 

いよいよ妄想旅行記もあと1回!

頑張ります。