旧暦ホテル ―古くて新しい暦と暮らす―

2018年立春からスタート。旧暦と共に、「大人の本気の『ごっこ遊び』を通じ、ホテルで過ごすような快適な日々を追い求めていきます。

如月の旅行記(如月分の「旧暦ホテル」まとめ)

先月、一人息子が結婚した。

息子は30歳を過ぎても実家暮らしで

今まで夫と息子と3人で暮らしてきたけれど

息子が結婚して家を出て行った事で

急に夫と二人きりになってしまった。

 

夫は今年中は再任用の仕事があるので

昼間は私一人で今までと同じ。

だが、夜になると息子はおらず、夫と二人きり。

来年になると本格的に退職する夫と、一日中二人・・・。

 

何も喋らない息子でも、いるのといないのじゃ大違いだわ。

 

そう思ってると、夫から突然旅行の提案があった。

「旧暦ホテル・・・?」

自宅からそう遠くはなさそうだが、気分転換になりそうなので

二人で行ってみることにした。

 

駅から送迎の車に乗り、宿へ向かう。

途中、満開の桜並木が現れる。

「今年の桜は早かったですね」

運転手さんにそう言うと

「そうなんですよね~。桜関係で予定していた行事も全て前倒しで(笑)」

苦笑付きで返事をしてくれた。

 

ロビーに入ると、ひな人形や菱餅と共に桜の枝。

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「桃の花ではないんですね」

出迎えてくれた着物の女性に尋ねると

「今月は旧暦二月、桃の花は桜の後に咲くので

今は桜の枝を飾っています」

と、笑顔で教えてくれた。そして続ける。

「お客様、ちょうど良い時期に来られました。

今日明日が桜は満開で見ごろですので

桜関連のアクティビティをお楽しみ頂けますよ」

 

ロビーのカウンターには絵手紙があった。

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ちょっとクスッと笑える、アスパラガスの絵手紙。

「こういうので季節を表現するのも素敵ね」

夫と二人で顔を見合わせて笑った。

 

3階の部屋へ通される。

畳スペースのある和洋室。セミダブルのベッドが2つある。

窓の外には庭と森が広がり、テラスにはソファーが置いてある。

今日は暖かいので、テラスのソファーで一息ついた。

 

「おい、こういうのあるらしいぞ」

夫が一枚のチラシを持ってきた。

野点・・・?いいわね。行ってみたいけど・・・」

読むと、今日と明日の15時から

旧暦ホテルに来る時に通ってきた桜並木であるらしい。

14時50分にロビーに集合。

14時にチェックインした私たち。現在14時35分だ。

 

「行ってみないか?」

普段こういう事をあまり言わない夫が言う。

余程行きたいのかしら?

せっかくの旅行だし、行ってみることにした。

 

14時50分。

桜色のかんざしを挿した着物の女性がロビーで

野点に参加されるお客様はこちらへどうぞ」と待っていた。

他にも何人か参加者がいるようだ。

 

ワゴン車に乗り込み、先ほどの桜並木の場所へ。

車の中から見ていても素晴らしかったが

降りるとまた一段と美しい。

 

桜色のかんざしの女性は、

他のスタッフがあらかじめ準備をしておいた場所へ案内してくれた。

送迎の車からは見えないようになっているその場所には

シートが敷かれ、軽食が準備されていた。

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バスケットが一組に一つ用意されていて

お抹茶だけでなく、コーヒー・紅茶

そしてイチゴのエクレアが入っていた。

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着物の女性が順番にお茶を用意し、運んで下さる。

「来て良かったな」

夫がボソッと呟いた。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ

ホテルに帰る時間となった。

ワゴン車の中では皆が口々に感想を述べ合い

和気藹々とした和やかな雰囲気になっていた。

 

夜、夕食会場のレストランへ行くと

先ほどご一緒させて頂いた方々が。

お互い軽く会釈をしながら席へ向かう。

 

今日の夕食は「鰆」。

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お漬物は大根。桜の葉があしらわれていた。

 

夕食後、1階へ降りてお土産を見ようとしたら

コンシェルジュの女性がカウンターでお仕事をしていた。

「こんばんは。今日の野点はとても楽しかったです」

思わず話しかけると、とても嬉しそうな顔で

「今年は桜の開花が本当に早くて驚きましたが

満開の日にお越し頂けてうれしいです!」

と返事をしてくれた。そして

「実は今日の桜並木とは違った場所で

ホテルから歩いて行ける場所に桜があるんですが

そこも綺麗なんですよ~。

おススメは光が柔らかい早朝です。

もしご興味がおありでしたら、地図をお渡し致しますよ」

彼女はカウンターから手書きの地図のコピーを渡してくれた。

 

「あら、本当に近い・・・。ホテルの敷地内なの?」

「そうです。ライトアップ等はしていない場所なので

今はご案内できないのが残念ですが・・・。

是非明日の朝、足をお運びくださいませ」

 

ありがとう、とお礼を言って立ち去ろうとして

カウンターの内側の片隅にある、1枚の額に入った葉書が目に留まった。

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「素敵な葉書ね」

そうすると彼女は、先ほどの比ではないくらい嬉しそうに

「実は、先日ご案内したお客様から、お礼のお葉書を頂いたんです。

嬉しくてこうして飾っているんですよ」

と言った。

このホテルはこうして、宿泊客との関係性を築いていく場所なのね。

そう思った。

 

翌朝。「いつもと違う枕では寝付けない」とよく文句を言う夫は

隣で大いびきをかいている。

どうやらよく眠れている様子だ。

 

身支度をしつつ夫を起こし、二人で早朝の散歩に出た。

コンシェルジュの彼女から教えてもらった場所に行くと

 

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朝の柔らかい光につつまれた桜たちが、待ってくれていた。

夫は嬉しそうな顔をして写真を撮る。

こんな嬉しそうな顔、二人きりの時に見たのはいつぶりかしら。

最近、夜に二人きりでテレビを見てると

いつも夫は気まずそうな顔をしていた。

もしかしたら退職後に二人きりになる時間を

夫も「どうしよう」って思ってたのかしら。

そう思うと、感じていた小さな不安も少し軽くなった。

 

ホテル内に帰って朝食。

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サンドイッチは3種類の味で楽しめた。

朝食会場にはカーネーションが飾られている。

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桜の時期が終われば「母の日」の準備がある。

毎年義理の母にはカーネーションを贈っているけれど

今年はオレンジ色もいいかもしれない。

実の母が亡くなって数年経つが

実の母にも花を贈りたいなあという思いがよぎる日が

今年ももうじきやってくる。

 

楽しかった旅行ももうすぐ終わり。

でも是非また、この旧暦ホテルに来たい。

今度は息子夫婦も一緒にどうかしら。

やっぱり夫と二人がいいかしら。

還暦越えの「乙女心」は揺れていた。

 

 

今月も長くなってしまいました「妄想旅行記」(笑)

今回はアラ還女性を主人公にした旅行記です。

 

今回の旅行記内の取り組みを改めてご紹介いたします。(敬称略)

・アスパラガス絵手紙(snow)

野点(やっこ)

春分のご案内(紺)

・三人娘からの葉書(ラビット)

カーネーション(ラビット)

 

・満月御膳

・早朝さくら散歩

・桜モーニング(じゅん)

 

ストーリーの都合上、ご紹介できなかった取り組みもありましたが

ご容赦ください。

 

旧暦弥生も楽しく参りましょう!